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2008年4月

占い師のジレンマ③

僕はパックだ。

5名の占い師の運命はどうなったのでしょうか?“占い師のジレンマ”早速話を続けましょう。

翌日、天空の真上に日が燦燦と輝いた時、5名の占い師たちは大広間に集まりました。今回も、だれも自分の名前を書くものはおりませんでした。昨日と同様横一列に立たされたと思う間もなく、3人の兵士が後に近づき、3名の占い師の首をこれまたみごとに切り落としました。

残った2名は隣の部屋に連れて行かれ、そこには昨日と同様に盛りだくさんの料理と王様が待っておりました。

「これで不埒な占い師どもはいなくなった。さあ心置きなく料理を味わってくれ」2名の占い師は、これで首を切られることもない安堵感から、食事もワインもことさら美味しく思えました。しばらくして、酔いで顔がうす赤くなった一人の占い師が王様に尋ねました。「恐れながら王様、これで私たちは側近として召抱えて頂けるのでしょうか・・」

王様は、白い布で口を拭きながら言いました。

「ううん、そのことだがお前たち2名ともども召抱えることはない。お前たちなら判るであろうが、国の運命をまかせる占い師が2名いては災いをもたらす。前にも言ったがお前たちのことを先刻いろいろ調べ上げ、その結果、お前たち2名のうち一人が余の側近にふさわしい占い師であろうとすでに決めておる。そこでだ。余が誰を指名し、その判断が正しいかどうかお前たちに占ってもらいたい。

明日、日が天空の真上に昇りし時までに、今一度生死をかけて占ってみよ。」

王様はそう言い残すと、またそそくさと退出してしまいました。残された二人は、顔面蒼白になったお互いの顔を見合わせ、しばらく席から動けませんでした。

なんとか各々部屋に戻った二人は、占うどころか真剣に考えはじめました。「王様に結果をお答えする言い方としては、《王様の指名は間違っており、指名すべきは自分である》―①《王様の指名は間違っており、指名すべきは相手である》―②《王様の指名は正しく、まさに自分である》-③《王様の指名は正しく、まさに相手である》-④がある。そのうち②と④は首を切られるリスクもありながら、あわよくば当たったとしても相手に側近の地位を明け渡すはめになり、こんな不名誉なことはないので問題外だ。①は、指名されたのが相手であるならば自分を主張することができるが、指名されたのが自分であった場合、王様の意思を否定し、前後の言い回しも矛盾して首を切られるはめになる。となると③の《王様の指名は正しく、まさに自分である》が、指名が相手であったならば諦めねばならないが、自分であれば一貫性があり、側近の地位も保障される。これに賭けるしかない。」二人の占い師は、結局同じ結論に達しました。

翌日、運命の時がやってきました。大広間には、王様が龍の透かし彫りを施した賢者の椅子に座り、その周辺を側近の家来たち数十名が列席しておりました。

占い師二名は、王様の前に引き出されました。二人の両側には、兵士がいかめしい顔で立っておりました。

「どうだ。占いはでたか?」王様は、声高にいいました。「はい」と占い師2名は、蚊の鳴くような声で同時に応えました。そして、王様の指名は正しく、まさに自分であると占いにでたことを、各々慇懃に話しました。

話終え、二人は王様の裁断を固唾を飲んで待ちました。

すると、まず側近たちが退出しはじめ、王様も席を立ち、扉に向かわれようとされました。二人の占い師は、屈強な兵士に腕をとられました。「お待ち下さい王様。なにとぞご下命を。どちらかにご裁断を」。王様は、二人の前に巻物を投げてよこし、「お前たちへの返答はこれじゃ」と言い残し退出していきました。

二人は必死に巻物を拾い上げ、中に書かれているものを、いや自分の名前を探しました。ところがそれを見た二人は、目も飛び出さんばかりの形相で「こ、これはどう言うことじゃ。これは、どういうことですか、王様。これは・・」と叫び、兵士に引きずられながらもう一つの扉の外に消えていきました。

大広間には、先ほどの巻物だけが、吹き込んだ風にくるくると舞い踊っていました。よく見るとそれは、なにも書かれていない、白紙の紙でした。

その後プルド国には、占い師は誰もいなくなりました。国王も自らの判断と叡智を持った側近たちとで公務を運営し、近代国家の礎を築きました。

いまでも小高い丘の上に、岩に彫られた碑があります。それには、こう書かれていました。

【運命は、大いなる神のみぞ知るものなり。ゆえに自らの信念に従い活きることこそ、人の道なり

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占い師のジレンマ②

僕はパックだ。〔占い師のジレンマ〕の話を続けましょう。

その夜、各々の部屋に戻った占い師たちは、こう思いました。“王様の言った不届きな占い師とは、私のことだろうか。いや、そんなことはない。あの様なことは、この国の占い師なら誰でもやっていることだ。正直に占ってやり、出てきた結果をそのまま伝えているだけじゃないか。ときには相手の顔色を読んで言うこともあるが、まったく嘘をいっている訳でもない。それで客は納得して金を払っている。それが何が悪い。きっと、適当にあしらわれかつ法外な金額を要求された客が、宮殿にタレこんだに違いない。11名とも履歴の書など読まなくてもよく知っている。そんなドジを踏みそうな占い師は、さて、誰だろうか・・・”

占い師たちは、だれもが自分の名前を書かず、推測と占いによりこれぞと思う名前を指定の用紙に書き込みました。

翌日、日が天空の真上に来たとき、11名の占い師は再度大広間に集合させられました。昨夜の丸テーブルはなく、椅子も無くなっていました。王の姿もなく六人の兵士だけが剣を抜いて待っていました。占い師たちは、横一列に立って並ばされ、兵士たちが後に近づいてきて、あっという間に六人の占い師の首をはねました。残った5名はわなわなと唇を震わせ、今にも失神しそうになりながらも、兵士たちに隣の部屋につれて行かれました。色鮮やかな絨毯に丸テーブルが置かれ、その上には盛りだくさんの料理があり、王様が手招きしてテーブルに座るよう占い師たちに命じました。

「みごと的中じゃ。お前たちの霊感、霊視は本物かもしれんな。昨夜は食事ものどを通らなかっただろう。遠慮はいらん。飲んで食べよ。」

さきほどのショックも冷め切れぬまま、5名は少しずつワインや食べ物を口に運びました。しばらくして、ワインのほどよい酔いのせいか、やっと自分たちの勝利に安堵する余裕がでてきました。口々に自分たちの占いの自慢話さえするようになりました。

頃合を計ったように王様が席から立ち上がると、占い師たちにむかって言いました。

「実は、もう一度占ってもらうことになった。先ほど報告があり、この5名の中に不埒な占い師が、まだ一人紛れ込んでいることがわかったのだ。お前たちの占いの真価を、もう一度見極めるためにも良い機会だ。再び明日、日が天空の真上に来たときに裁断する。」王様はそう言い残し、そそくさと退出してしまいました。占い師の5名は、やっと歓喜の絶頂にたどり着いたと思いきや、再び奈落の谷底に突き落とされた気分になりました。

    つづく

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占い師のジレンマ①

僕はパックだ。あなたは、霊感、霊視、占いを信じる方ですか?

これは、昔、むかしの本当にあった・・かもしれないお話です。

まだ、ヨーロッパやアジアが混沌としていたユーラシア大陸の片隅に、プルド国という王国がありました。ある日、国王は巷で有名な12名の占い師を宮殿に招きました。その日は黒い雲に月も隠され、生臭い風が漂い、山犬がやたらに泣き吠える闇夜でした。12名の占い師は、閑散とした大広間の中央におかれた丸テーブルに、招かれた訳もわからず、なにかと推測しながら座って、王の第一声を厳粛に待っておりました。やがて二人の精悍な兵士を後に控えさせた王が、同じテーブルに座した12名の占い師を見渡し声太に話し始めました。

「今宵お前たちを招き入れたのは、余とともにこの王国の行く末を良きものにするため、余の助言者と成りうる側近の占い師を選出するためだ。」思わずすべての占い師から“おっ!”という感嘆の声が大広間に漏れ響き渡りました。「お前たちがこれを望み、またお前たち12名の霊感、霊視の能力の高さは、余の耳にも聴き届いている。未来を言い当てる術はずば抜けているとか・・。そこで側近の占い師を選出にあたり、今宵お前たちに占ってもらいたいものがある。」またしても平静を装っていた占い師すべてに“望むところだ”と、挑戦的な表情が露骨に表れました。王は無視して先を続けました。「実はお前たちの中に、一人だけ許されざる者がいる。その者は俄仕立ての占いで、わが愛する民衆を二枚舌でたぶらかし、手練手管で信用させ、金銭を巻き上げる守銭奴のような占い師である。驚くなかれ自筆の占いの書物なども売りさばき、得た収益で自分の弟子を養成し、金銭を巻き上げる団体をつくろうと画策しておる。その者の名はすでに明白であり、この紙にしたためてある。そこでお前たちに、得意とする占いでその者が誰かを割り出してほしい。間違って占った者は、その者と同罪とみなし即刻首を斬る。また、その不届き者が、自ら自分だと占いより申し出たならば、斬首せず許すこととする。みごと当てた者には、優遇するであろう」

いままで喜色にとんだ顔をしていた占い師の面々は、突然奈落の底に落とされたように、顔面蒼白になりました。すると、一人の恰幅のよい、坊主頭の中年の占い師が、恐る恐る口を開きました。「おそれながら王様に申し上げます。占いとは、森羅万象のすべての事柄(過去も未来も)が叩き込まれている空間から、占い師の身体を通して外に表出するものでございます。従って、占い師の体調のいかんによって占いが左右する、いやいやめったにそう言う事はないのですが、たまにですが、本当にたまに占いが当たらぬこともありまして・・・。まして、自分を占うのは至難の業でございます。なにとぞ、なにとぞ占いの如何による斬首の刑だけはご勘弁いただきたく、御一考をお願い申し上げます。」

王様は、後ろの兵士の一人に目配せをしました。兵士はつかつかと坊主頭の占い師のところに行くと、剣をぬき、いきなり首をはねてしまいました。血しぶきが噴水のように飛び散り、首は転がって、ちょうど丸テーブルの中央あたりで頭を上にして止まりました。11名の占い師は声も出ず、何人かは椅子から転げ落ちました。

王様は立ち上がると、威厳を持って話はじめました。

「体調のいかんによって占いが左右すると?お前たちは自分が病気等で寝込む以外は、毎日路上やいかがわしい場所において占い、真実と謂わんばかりに、か弱い民から金をまきあげているではないか。また、余の側近となるならば、その占いが国の存亡にかかわる重要な意味をもつことを知れ。お前たちが巷で豪語しているように、占いに一切の過ちがあってはならぬ。これからお前たちに、首を切り落とした者も含めて12名の占い師の履歴の書を渡す。それを持って各々にあてがった部屋に入り、占って先の一名を見出すのだ。必要なものがあれば、番人に言うがよい。用意させよう。自分の部屋から絶対出てはならない。逃げ出そうとしても無駄だ。明日、日が天空の真上に来たとき、この大広間で裁断する。部屋には食事も湯もある。まずはくつろげ。余も疲れた。」

     ・・・つづく・・・

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